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グッドルーザー バスケットボール女子 悔しさを糧に進む藤蔭 次のステージへ 【大分県】

グッドルーザー バスケットボール女子 悔しさを糧に進む藤蔭 次のステージへ 【大分県】

勝者がいれば、必ず敗者がいる。だが、涙の数だけ強くなれるのもまた真実だ。悔しさを胸に後輩へ、次の自分へとバトンを渡す。勝利だけでは語れない青春が、そこにある。敗者という名の強者たち。“グットルーザー”の言葉に耳を傾ける。


第78回全国高校バスケットボール選手権大分県予選
10月26日 三和酒類スポーツセンター
女子準決勝
藤蔭68(11―12、15―39、14―29、28―27)107明豊

 試合終了のブザーが鳴った瞬間、藤蔭の選手たちは立ち尽くした。明豊に68ー107で敗れた。点差は開いたが、そこに流れた40分は決して数字だけでは測れない。コートの中央で泣き崩れる3年生。その背中には、1年間の挑戦と覚悟が刻まれていた。

 第1クォーター(Q)は互角の戦いだった。11―12、スピードと連動性を武器に、平川あいか監督が掲げた「スピードと正確性」のスタイルを体現していた。しかし第2Q、相手のキープレーヤーに22得点を許し、流れを奪われる。身長差を補うためにインサイドを固めたが、ドライブと3点シュートを両立する明豊の完成度は高かった。「完璧なバスケをされたという印象」。平川監督の言葉に、無念さと敬意が入り交じる。

 それでも、第4Qには藤蔭らしい攻守の展開の速さを取り戻した。キャプテンの松井二乃葉(3年)は、前半でファウルがかさみ、思うようにプレー時間を得られなかった。それでも限られた時間の中で積極的にシュートを打ち続け、チームに勢いをもたらした。「守備の寄せが遅れてしまった」と悔しさをにじませつつも、責任感を背負って戦い抜いた。けがに苦しんだ3年間を経て、最後の大会でユニホームに袖を通せたこと自体が、松井にとっての誇りだった。「最後は勝って終わりたかった。でも、自分の強みを磨いて大学でも挑戦したい」。涙の奥には、次のステージへと進む覚悟があった。

 エースの大神埜乃(3年)も、最後まで得点源としてチームを引っ張った。膝のけがを乗り越え、この大会に懸ける思いは人一倍だった。「自分の仕事である得点を取りきれなかった」と唇をかみしめたが、鋭いドライブや中距離からのシュートで存在感を放った。第2、第3Qの苦しい時間帯にも攻める姿勢を崩さず、仲間を鼓舞し続けた。

チーム最多の15得点を決めた大神

 試合後、平川監督は選手一人ひとりに声をかけた。「お疲れさま。でも、まだまだやれる部分はあったね」。悔しさを次に変えるための言葉だった。寮でともに過ごす日々の中で、指導者として、そして人生の先輩として、平川監督が本当に伝えたかったのは、「勝ち負けの先にある成長」だった。結果に一喜一憂するのではなく、努力の積み重ねの中にこそ、藤蔭らしい強さを見出してほしい。そんな思いが、静かに選手たちの胸に刻まれた。

 小柄なチームが掲げた「スピード革命」は、結果こそ全国には届かなかったが、その過程にこそ価値があった。緊張で固くなった序盤、思い切りプレーできた終盤。その対比が、経験の差であり、成長の証でもある。

 涙の数だけ強くなる。平川監督と3年生が見せた挑戦の1年は、確かに次の世代へと受け継がれていく。

試合後は涙が止まらなかった

(柚野真也)

大会結果

2023年度