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春の高校バレー県予選展望 男子(5)大分工業 弱さを知る強さ 勝利への扉を探す 【大分県】

春の高校バレー県予選展望 男子(5)大分工業 弱さを知る強さ 勝利への扉を探す 【大分県】

 6月の県高校総体を経て、チームが次々と動き出した。迎えるのは春の高校バレー県予選。男子は大分南、大分工業の2強が有力だが、虎視眈々(たんたん)と他校も王座を狙う。高さか、粘りか、あるいは総合力か―。大会を制し、全国への扉を開くのはどのチームか。熱戦の幕開けを前に、その行方を展望する。

 ここ数年、大分南と覇権を争っている大分工業。夏以降は主力のけがに悩まされながらも攻撃のバリエーションを広げるなど、新しい“大工スタイル”の構築に着手してきた。しかし、物理的な課題以上に大きいのが気持ちの面で殻を破りきれないことだ。「長年チームを見ているが、核になる選手がいないし、熱量も足りない。近年で一番レベルが低い。このままでは絶対に勝てない」と江崎裕之監督もこれまでにないほど厳しい言葉を口にする。

 決して選手たちにやる気がないわけではない。素直で真面目なチームカラーも変わらない。下級生も県高校フレッシュバレーボール優勝大会で優勝し、自信を得た。しかし、あと一歩“思い”が足りない。「表の努力といえばいいのか、今年のチームは素直で言われたことはやる。ただ、殻を破るには自ら“負けたくない”、“やってやる”という気持ちが足りない。見えないところで裏の努力を積む必要がある。そこに選手自身が気づいてほしい」(江崎監督)。

 練習は活気があり、和気あいあいとした仲の良さも伝わってくる。だが、楽しくやるだけでは勝てない。歯を食いしばり、苦しさを乗り越えた先に勝利があり、そこにこそ真の楽しさ、喜びがある。江崎監督は「楽しさを履き違えないように」と常に言い聞かせているという。

筋力トレーニングに励む選手たち

 もちろん、成長の兆しもある。それは自分たちで考え、動く自主性が伸びていることだ。江崎監督は「ミーティングでは私の頭の中の“考えのピース”をすべて出し切っている。これまではそのピースをはめるところまでやっていたが、今回はピースをはめずに渡している。それを選手たちが自らかみ砕き、考え、行動に移す。その繰り返しで考えるクセをつけることができれば、試合で状況に応じて動けるようになる」と語る。

 指揮官の思いが込められたピースを受け取った選手たちの意識は少しずつ変わり始めている。キャプテンの山口蓮太(3年)は「3年生がチームの中心になれていないのが問題。自分たちが役割を果たさなければ下級生はついてこない。行動で示したい。大分南には高さ、パワーともにかなわないが、サーブやレシーブ、連係などを磨いて対抗したい」と自分たちの弱さを認めた上で、前を向く。「最後の大会、このままでは終われない」という気持ちが全身からあふれている。

細部にこだわる意識は高くなっている

 県予選での目標は「誰に勝つか」ではなく、「自分たちのベストを尽くしてコートに立つこと」だ。殻を破り、強い覚悟を持った者だけが、学年を越えて仲間と肩を並べられる。大分工業の真の相手は、目の前の強豪ではなく、自分たち自身に他ならない。

(甲斐理恵)