
【指導者の肖像〜高校スポーツを支える魂〜】 信じる力が未来を変えていく 柳ケ浦高校バスケットボール部監督・中村誠(前編)
バスケ
全国高校バスケットボール選手権大会(2次予選)
決勝 柳ケ浦87 – 62大分舞鶴
準決勝 柳ケ浦67 – 62別府溝部学園
準々決勝 柳ケ浦111 – 80中津北
別府溝部学園の3連覇を阻止し、優勝したのは柳ケ浦だった。俊敏で得点力のあるポイントガードに、身長200㌢を超える留学生センターを軸に、スピードと高さを武器とする別府溝部学園とチーム構成が似通う柳ケ浦。それでも前者は2年連続全国高校バスケットボール選手権大会(ウインターカップ)に出場し、昨年は全国高校総体にも出場した。3年前のウインターカップ出場を最後に全国の舞台から遠ざかる柳ケ浦としては、苦汁を飲まされた3年間だったに違いない。柳ケ浦の中村誠監督の「王者・溝部学園と言われるのが悔しかった」との言葉は本音だ。
柳ケ浦が別府溝部学園と対戦したのは準決勝だった。柳ケ浦は相手のエースポイントガード島袋琉希(3年)に守備のスペシャリスト木原光晴(2年)を、2人の留学生に対してはモンゴルから語学留学するドゥルグーン(2年)をマークにつけた。この采配がピタリとハマる。木原は全ての攻撃の起点となる島袋に対し得点だけでなく、アシストも阻止して、別府溝部学園の攻撃のテンポを狂わせた。ドゥルグーンは身体能力の高い留学生に対し、幅とパワーで対抗する。
3年ぶり3度目の優勝となった柳ケ浦
ドゥルグーンにとって、この2年間はプレッシャーとの戦いだったという。日本語を学びに来たバスケットボール経験がある大きな少年は、スポーツ留学してきた留学生とは来日の目的が異なる。それでも周囲はスポーツ留学生と同じような活躍を期待する。自分より大きな留学生を相手に思うようなプレーができず、入学当初は感情を抑えきれず自分を見失うこともあった。「バスケを辞めたい」と懇願したのは一度や二度ではない。今大会が始まる2日前の夜には、中村監督に「試合に出たくない、逃げたい」と大泣きした。中村監督は「プレッシャーはみんなある。お前が頑張っている姿をチームメートは見ている。頑張り過ぎないくらいに頑張れ」と諭した。その言葉がどれだけ通じたかは定かではないが、ドゥルグーンが自信を持ってプレーしていたことは確かだった。
試合は互いに強度の高い守備でロースコアとなったが、柳ケ浦は相手の長所を巧みに消し、仲間廉人(3年)が試合をコントロールする。第4クオーター(Q)の残り5分で逆転してからは、仲間がギアを上げるとチーム全体の勢いが増し、一気に逃げ切った。勝因を挙げるなら、ち密な守備システムを落とし込んだことに加え、「目の前の相手に対し負けないという強い気持ちだった」(中村監督)。
大分舞鶴との決勝戦は、大一番を制した勢いそのままに第1Qで大差をつけると、隙を与えずに畳み掛ける。仲間は「どんな試合でも気を緩めず、焦らず、勝つことだけを考えた」と冷静に試合を進め、3年ぶり3度目の優勝を成し遂げた。仲間は「これまでの努力が報われた」と胸を張り、ドゥルグーンは「バスケが楽しい。全国大会では自分の力を見せたい」と満面の笑顔と流ちょうな日本語で話した。
攻守でチームの勝利に貢献したドゥルグーン
(柚野真也)
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