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全国高校サッカー選手権県予選特集(6) 大分東明 “体力9”の裏に積み上げた汗と証 【大分県】

全国高校サッカー選手権県予選特集(6) 大分東明 “体力9”の裏に積み上げた汗と証 【大分県】

 高校サッカーの集大成となる全国高校選手権大分県予選が、いよいよ10月18日に開幕する。36校34チームが出場し、1回戦から熱戦が繰り広げられる。大分鶴崎が頭一つ抜けた存在として優勝候補筆頭に挙がるが、挑戦者たちも大舞台を目指し闘志を燃やしている。果たして冬の切符を手にするのはどこか。本特集では、その主役候補となるシード8校を余すことなく紹介する。第6回は走り込みで鍛えた走力と堅守を武器に挑む大分東明。

 シード校として2回戦から登場する大分東明の指揮を執るのは、有村光史。かつて大分トリニータで左サイドバックとしてプレーし、2002年のJ1昇格を支えた職人肌の選手である。2010年から指導者として母校に腰を据え、地道にチームを築き上げてきた。

 大分東明はこれまで何度かベスト8に顔を出したが、それ以上は届かず。今大会は「8強を最低限のノルマとし、それ以上を狙う」と言い切る。数字にも裏づけがある。戦力分析では、攻撃力7、守備力8、組織力8、体力9、精神力8と、昨年から軒並み上昇。特に体力は最高値の「9」となる。

 この数値を支えるのは、昨年11月から続けてきた週2回の4㌔走である。コースも距離も同じ。タイムを毎回計測し、半年以上積み重ねた。最初は有村監督が先頭に立ち、ついて来られない選手が5人ほどいた。だが半年後、今度は監督が最後尾に回るほどに選手が力をつけた。「技術が高いチームではない。だから走力と守備で勝負する。その意識が浸透してきた」と胸を張る。

走り込みの積み重ねが結果につながった

 守備と走力に自信を持つ一方で、攻撃面も強化を怠らない。卒業生が外部コーチとして関わり、パスワークやロングボールの判断を徹底。攻撃も守備も「プラス1」を合言葉に、数的優位を作り出す戦い方を磨いている。勝ち筋は明快だ。「勝ち方は1ー0。セットプレーでも、カウンターでもいい。必ずチャンスはある。その時に射止めるかどうかだ」(有村監督)。少ないチャンスを確実にものにする、勝負強さが求められる。

 選手の心に火をつけたのは、昨冬の新人大会だった。初戦で中津南を下したものの、3回戦で昭和学園に敗退。その時、5人の選手が涙を流した。これまで悔し涙を見せることはなかった選手たちが、初めて本気で悔しさを表現した瞬間だった。有村監督はその姿を忘れず、冬場の練習で繰り返し問いかけた。「あの涙はなんだったのか」。選手はその言葉を胸に刻み、6月の県高校総体でベスト8に進出した。自分たちの力でつかみ取った結果は、確かな自信に変わった。

 体力に裏打ちされた守備、そして「1ー0」で勝ち切る現実的な戦い方。大崩れせず、粘り強く試合を進める姿は夏の強化遠征でも証明された。シード校となった今、チームに漂うのは不安よりもむしろ確かな手応えだ。

 有村監督は「高校生なんで何が起きるかわからない。一戦必勝に変わりはない」と言う。システムも試合の入り方も、常に最善を探りながら戦う覚悟である。走力と守備を武器に、粘り強く戦い続ける。

(柚野真也)

大会結果