大分西高校なぎなた部 田口真帆(3年) file.828
なぎなた
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3年生、夏物語 なぎなた男子 研究と努力の結晶 全国の頂点へ 【大分県】
なぎなたの幸村杯第10回全国選手権で、大分西高校の平川心吾(3年)が初優勝を飾った。男子には全国高校総体種目がなく、競技力向上を目的に創設された大会には全国から75人が集結。初めての全国舞台で、平川は冷静さと粘り強さを武器に勝ち上がり、日本一の座をつかんだ。決勝は果敢に面を打ち抜き一本勝ち。勝負どころで迷いなく踏み込む姿に、観客席も沸いた。
序盤は調子が上がらず、3試合連続で判定勝ちと苦しい展開が続いた。それでも「調子が悪いなりに負けないなぎなたができた」と振り返るように、崩れない精神力があった。準々決勝以降は吹っ切れ、自分の間合いを保ちながら遠間から一本を狙う持ち味を発揮。「相手に有効打を許さない」冷静さで勝利を重ねた。観客席で敗退した仲間が声援を送り続けたことも背中を押し、「大分勢としてこのままでは終われない」という思いが力へと変わった。

平川がなぎなたを始めたのは高校入学後。小学2年から中学2年まで空手に打ち込んでおり、緊迫感ある勝負の空気には慣れていた。ただし、なぎなたと空手では距離間はまったく異なる。苦手だった面打ちを何度も繰り返し、己の型を築き上げた。「空手となぎなたは別物。自分の理想を作り上げていった」と語る。
その成長を支えたのが研究心だ。昼休みに打突を繰り返し、夕方には動画で得たイメージを体と一致させる。地道な積み重ねに自信を持つ一方、「日本一は奇跡。偶然が重なっただけ」と謙虚に話す。誰よりも練習したという自負と、なお技術的な伸びしろを求める姿勢が共存している。

3年間は決して順風満帆ではなかった。1年時には同級生と大ゲンカし、部活を辞めかけた。しかし「このまま終わるのはダサい」と監督に諭され、真剣に向き合うことを決意した。チームメートの原寛太(3年)には3年間一度も勝てなかったという。「日本一になったが、全く追いついたとは思っていない。大学で再び対戦できたら勝ちたい」。勝負師としての執念がにじむ。
今後も大学で競技を続け、「自分のなぎなたを楽しみ、突き詰めたい」と語る平川。技を磨き、理想の形を追求する先に、再びの日本一が見えてくるはずだ。
(柚野真也)