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全国高校サッカー選手権県予選特集(3) 鶴崎工業 攻守の均衡を武器に4強の先を目指す 【大分県】

全国高校サッカー選手権県予選特集(3) 鶴崎工業 攻守の均衡を武器に4強の先を目指す 【大分県】

 高校サッカーの集大成となる全国高校選手権大分県予選が、いよいよ10月18日に開幕する。36校34チームが出場し、1回戦から熱戦が繰り広げられる。大分鶴崎が頭一つ抜けた存在として優勝候補筆頭に挙がるが、挑戦者たちも大舞台を目指し闘志を燃やしている。果たして冬の切符を手にするのはどこか。本特集では、その主役候補となるシード8校を余すことなく紹介する。第3回は、あと一歩が届かない悔しさを胸に刻む鶴崎工業だ。

 今年のチームには特定のスターはいない。しかし、そこにこそ強さの源がある。全員が役割を理解し、互いに補い合う一体感が芽生え、チームとしての成熟度を着実に高めてきた。長らく県内の主要大会では決勝の壁に阻まれてきたが、その壁を突き破るための条件が整いつつある。

 前線からのプレッシングと切り替えの速さは、昨季からの大きな武器である。今年はさらにパスをつなぐ意識が高まり、「蹴るべき時は蹴り、つなぐべき時はつなぐ」というメリハリのある攻撃に進化してきた。夏休みを経て戦い方は段階的に整理され、攻守のバランスが整ったことが大きい。キャプテンでゲームメーカーの篠田怜央(3年)も「速攻で仕掛ける場面と落ち着いてパスを回す場面、その切り替えがうまくできている。守備も無失点に抑える試合が増え、自信がついてきた」と手応えを口にする。

 中津留正三監督が繰り返し強調するのは「自発性」である。監督の指示を待つのではなく、自ら察して判断し、動ける選手が増えることが勝利の鍵を握る。試合の流れを自分ごととして捉え、ピンチやチャンスの局面で即座に最適解を導き出すことができるかどうか。精神的な成熟は、技術や戦術と同じくらい重要な要素だ。

戦術を整備し、ワンランク上のチームとなった

 この夏、チームの守備はさらに磨かれた。元来、守備を基盤に構成されてきたが、ボールの奪いどころを明確にし、奪った後の攻撃の形も整理された。「ブロックとブロックの間でパスを受けるのか、相手の裏を狙うのか、あるいは近い距離でパスをつなぐのか。その判断を常に明確にするように」と監督は選手に伝え続けてきた。その徹底が、プレーの迷いを減らし、チーム全体の機能性を高めている。

 数値に表れる強さも見逃せない。攻撃力8、守備力8、組織力7、3年生力8、体力7、精神力9。昨年と比べて全体のバランスは維持されつつ、特に精神面と3年生のリーダーシップで上積みが見られる。篠田を筆頭に主体性を持つ選手が増えたことは、チームの推進力となっている。けがで県高校総体に出られなかった主力も復帰し、戦力は確実に厚みを増した。

 試合ごとに積み重ねてきた経験が自信へと変わりつつある今、鶴崎工業は一つ上のステージを狙える位置に立っている。これまで何度も跳ね返されてきた決勝進出の壁。その前に立ちはだかるのは、技術でも体力でもなく、最後は「自ら動く」という主体性だろう。

(七蔵司)

大会結果