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バトントワーリング 16歳の初挑戦 世界3位の快挙 【大分県】

バトントワーリング 16歳の初挑戦 世界3位の快挙 【大分県】

 世界の舞台を夢見ていた16歳が、この夏、その扉を開いた。8月、イタリア・トリノで開催された「IBTF世界テクニカルバトントワーリング選手権大会」。初めての日本代表として臨んだ阿南友理(大分雄城台1年、E・STAR BATON TEAM(イー・スターバトンチーム)所属)は、極度の緊張感に包まれる本番で一度もバトンを落とさない“ノードロップ”の演技を披露。難易度の高い技を次々と決め、堂々たる存在感を示した。世界大会初出場でありながら、アーティスティックトワール女子ジュニア部門で世界3位という快挙を成し遂げた。

世界3位に輝いた阿南

 初めてバトンを手にしたのは4歳のとき。姉の影響で軽い気持ちから始めたものの、思った以上に難しく、戸惑いも多かった。それでも小さな体で必死に練習を重ね、イベントのステージで拍手を浴びたとき、その喜びがすべてを上回り、阿南の心を虜にした。6歳で臨んだ「全日本バトントワーリングジュニア選手権大会九州大会」ではソロ部門金賞を獲得。周囲の選手の演技に刺激を受け「もっと頑張ろう」と強く心に刻んだ。

 大きな転機は小学3年のころ。「第44回全日本バトントワーリング選手権大会」で初優勝を果たしたときだ。「先輩たちが初めて世界大会への出場を決めたので、いつかは私もと強く思った」と振り返る。以降は全国大会の常連となり、中学3年時には「JAPANCUP」で中学生最高学年部門を制覇。着実に階段を上り続けてきた。

 強さの源泉は尽きない挑戦心にある。阿南は難易度の高い技に恐れず挑み続ける。高く投げ上げたバトンの下で体を回転させてキャッチする大技を得意とし、現在は“カトル”と呼ばれる4回転も成功させる。その大技を世界大会でも披露し、見事に成功させた姿は観客の視線を釘付けにした。

 華やかな舞台に立つ一方で、幼少期の阿南は試合後に泣きながら先生のもとへ帰ることが常だった。「演技が終わるとホッとして涙が出ていた」と笑う。だが数々の舞台を経験するうちに、緊張をコントロールできるようになった。今でも大会前には先生から渡される「キットカット」を食べるというルーティンを大切にしている。そんな小さな儀式が心を落ち着かせ、阿南の等身大の姿を映し出す。

次の目標は「世界一」となる

 阿南にとってバトンの魅力は「衣装の華やかさや演技で人を笑顔にできること」にある。その裏には家族や仲間、指導者たちの支えがあり、感謝の思いを言葉にする姿からは、16歳らしい素直さと強さが同居する。

 幼い頃、憧れた姉の背中を追いかけて始めたバトントワーリング。その先に待つのは「世界一」という新たな目標である。世界3位に輝いた今、阿南はすでに次のステージを見据えている。トリノでつかんだ拍手と自信を胸に、挑戦はまだ始まったばかりだ。

(塩月なつみ)