延期されたリーグ開幕戦に向けて臨戦態勢を整えるヴェルスパ大分。今季は過去最高の７位を大きく上回る順位を目指す。飛躍のカギを握る注目選手の２人目は、昨季J３ギラヴァンツ北九州から加入したFW前田央樹だ。「チームが上位を狙うためには僕が得点王になるしかない」と強い決意を語った。

　新たな得点源として大きな期待を背負った昨季は気負いすぎた。前田は「上のカテゴリーから加入した手前、すぐに結果を出してチームの勝利に貢献しなければいけない気持ちが強すぎた」と振り返る。両足に頭とシュートパターンは多彩で、どんな形でもゴールを奪えるストライカーにとって、パスの出し手との“感覚”が得点量産につながる肝となる。それ故に戦術を覚え、「そこから自分の持ち味をどう出すか。周りとの連係をどう高めるか」を考えたが、熟考するほど持ち味の思い切りの良さが消えた。

ヴェルスパで２季目となる前田央樹

　リーグ戦は開幕から５試合先発出場したが結果を出せず、徐々に出番を失った。自信を失った前田は練習でも精彩を欠き、紅白戦、練習試合でも得点できないスランプに陥った。元気が取りえの前田から笑顔が消えたとき、須藤茂光監督の「自分のプレーに集中しろ」との言葉で吹っ切れた。得点するためにはゴール前に顔を出す回数を増やし、シュートを打つ。実にシンプルなプレーがストライカーを蘇らせた。16節で移籍後初ゴールを決めると、得点感覚をつかみ、後半戦だけで７得点挙げた。

　チーム在籍２年目となる今季は迷いがない。「自分のやることは変わらないし、チームのやることがハッキリしているので分かりやすい。今季はトップ下でボールを持てる選手が多いので得点チャンスが増える。昨年はチーム全体で満遍なく得点できていたことは悪くはないが、上位のチームには必ず得点王に絡む選手がいる。FWである以上はそこを狙いたい」と言い切る。どんな体勢でも貪欲にゴールを狙う前田の姿は、チームに活気を与え、見る者を奮い立たせる。須藤監督も前田に期待するひとりだ。「元気の良さを忘れずにプレーしてほしいが、冷静に状況判断できればもっと点が取れる」。覚醒の予感が漂う点取り屋は、上位を狙うヴェルスパ大分の反撃の担い手となるだろう。

今季は得点王を狙う

（柚野真也）