
【指導者の肖像〜高校スポーツを支える魂〜】 信じる力が未来を変えていく 柳ケ浦高校バスケットボール部監督・中村誠(前編)
バスケ
スポーツにおいて勝つために必要な要素は、ひたむきさであり、競技への純粋な愛や情熱であったりする。勝者はその思いが誰よりも強い。敗者は次の勝者になるために心血を注ぐ。今年も晴れ舞台を目指し、県予選を戦った高校生たち。全てを出し切り笑顔を見せる者。悔しさで表彰式では素直に喜べなかった者。ここでは、あと一歩及ばず全国に届かなかった「美しき敗者」を追った。
今年の全国高校バスケットボール選手権大会(ウインターカップ)県予選決勝は、前評判どおり中津北と大分のカードだった。全国まであと一歩のところまで着実に成長を続けてきた大分だが、伝統校として君臨する女王の力強さを前に、初優勝の目標達成はまたも持ち越しとなった。
「前半は互角に戦えて当たり前。勝負は後半だと予想していた」。試合後、楠本哲二監督が振り返ったように、前半6点差と食らいついた。大分はエースでキャプテンの秋吉楓(2年)の高い技術を筆頭に、有墨遥野(2年)がインサイドとアウトサイドの両方から攻め、山田晶(2年)の鋭いカットイン、センターの牧唯夏(2年)のリバウンドやゴール下の強さなど、それぞれが役割をしっかり果たした。そして今大会までに強化を重ねたシュートに結びつけるナンバープレーなど以前に増して機能し、中津北のオールコートディフェンスにも動じず、的確な判断で得点を決める場面も多く見ることができた。後半もこの勢いで入ることができれば接戦に持ち込める…という期待が膨らむ戦いぶりを見せてくれた。
秋吉楓の高い技術は光ったが勝利に導けなかった
しかし時計の針が進むにつれ、中津北の強度の高いディフェンスに崩されはじめる。一瞬の隙をも逃さない中津北に攻められ、少しずつ得点差が開いていった。後半失速の理由について「決して体力差があるわけではない。中津北の目には見えない伝統校の力に勝てなかった」と楠本監督。1、2年生チームとはいえ、バスケットボールの経験値に関しては大差ない。伝統校としての意地やプライドをプレーにぶつける“覚悟の差”とも言うべきか。何が何でも守り切るという気持ちの強さは、中津北が一枚上手だった。秋吉は「チームとしてはそれぞれが役割を果たせたと思うが、個人的には調子がよくなかった。後半のパフォーマンスが落ちてしまったので、最後まで戦える力をつけなければいけない」と次を見据える。
中高一貫校として“6年計画”を掲げ強化してきた大分。来年はその最終年となり、ようやく3学年がそろうチームとなる。“伝統”と言ってしまえばそれまでだが、それに対抗できるだけのフィジカルの強さは備えているはず。今回の悔しさをさらなる飛躍への力に変えて、挑戦者の戦いは続く。
来年は気持ちの強さが求められる
(黒木ゆか)
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