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グッドルーザー② 男子バスケ柳ケ浦 悔しさから踏み出す一歩

グッドルーザー② 男子バスケ柳ケ浦 悔しさから踏み出す一歩

 スポーツにおいて勝つために必要な要素は、ひたむきさであり、競技への純粋な愛や情熱であったりする。勝者はその思いが誰よりも強い。敗者は次の勝者になるために心血を注ぐ。今年も晴れ舞台を目指し、県予選を戦った高校生たち。全てを出し切り笑顔を見せる者。悔しさで表彰式では素直に喜べなかった者。ここでは、あと一歩及ばず全国に届かなかった「美しき敗者」を追った。

 

 2年ぶりの全国高校バスケットボール選手権大会(ウインターカップ)出場を目指す柳ケ浦は、別府溝部学園との準決勝で涙をのんだ。中村誠監督の試合後の第一声が全てを表していた。「くそー!」。悔しさを隠すことはなかった。抜きつ抜かれつの攻防は緩むことなく続き、最終クオーター(Q)半ばに2㍍のモンゴル人留学生ドゥルグーン(1年)が5つ目のファウルで退場。勝負どころで高さを失ったが強度の高い守備で地上戦に持ち込み、3点差まで追い詰めたが、あと一歩及ばず。勝者と敗者を分かつことが酷に思える熱戦だった。

 

 前半は柳ケ浦ペースだった。別府溝部学園のキープレーヤー島袋琉希(2年)とフセイン(2年)に対し、仲間廉人(2年)とドゥルグーンをそれぞれ密着マークさせた。相手のスピードと高さを封じるまでには至らなかったが、互角の勝負に持ち込んだ。そうなれば残りの3人の優劣で決まる。柳ケ浦はキャプテンの松本克己や石川桂也ら3年生の活躍が光った。リバウンドやブロック、守備のフォローとチームの潤滑油として動き回り、攻撃力の高い別府溝部学園をロースコアの展開に持ち込むことに成功。前半を5点リードで折り返す。

 

石川桂也は気持ちのこもったプレーを見せた

 

 第3Qにファウルが重なり、逆転を許すが、「負ける気は全くしなかった。勝負どころで一気に突き放せると思っていた」と松本。磨き上げた守備は機能し、懸念材料であった得点力は全員でカバーした。「ゴール下のフセインを気にして外からのシュートが消極的になるのは分かっていたので、ファストブレイクをつくり出す形の守備をした」(中村監督)。第4Qも一進一退の攻防。仲間、石川も美技を連発し興趣を大いに盛り上げた。

 

 残り2分を切った時点で柳ケ浦が追い詰めた。中村監督が勝負どころだったと振り返った場面。全員がディフェンスリバウンドで体を張り、得意の速攻を何本も仕掛けたが、「足が止まり、消極的になってしまった」。高さで勝る相手に接点ではじかれ、一つ一つのプレーが止まって攻撃が停滞し、最後は62-68で試合を終えた。

 

 ただ、1年前はシードに入らなかったチームだ。決して一級品といえない素材を磨きに磨いて、戦える選手、チームにしていくのが中村監督のイズム。そんな手づくりのチームが2連覇を達成したチームを追い詰めた。「奇麗ごとは抜き。勝負は負けたら終わり。この悔しさ、結果を受け止めなければいけない。ただ、選手は、3年生は本当によく頑張った。勝たせてあげられなかったことが辛い」と目を真っ赤に潤ませ、選手一人一人にねぎらいの言葉をかけ、抱きしめた。

 

 どこまでも信念を貫く監督とともに、悔しさを味わった下級生が飛躍を遂げることができれば、全国の扉は開かれるはずだ。仲間は「僕が泣くわけにはいかない。先輩たちの悔しさを来年は勝って晴らしたい。そのためには勝負どころで得点できる選手にならなければいけない」と話し、涙をこらえた。3年生の思いを胸に新たなスタートを切ろうとしている。

 

仲間廉人は美技を連発した

 

(柚野真也)

大会結果

2023年度