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熱戦を彩ったヒーローたち②大分工業 夏の甲子園予選2019

熱戦を彩ったヒーローたち②大分工業 夏の甲子園予選2019

熱戦が繰り広げられた第101回全国高校野球大分大会で

強烈なインパクトを放ったチームや選手たちを紹介する。

 

 第3シードとして実力通りの戦いを見せた大分工業。準決勝で惜敗したが、春の県大会に優勝し、九州大会で1勝を挙げた古豪は、確かな足跡を残した。

 

 初戦の柳ケ浦戦から4連投のエース日高翔太(3年)が躍動した。2回戦、3回戦は自慢の制球力で危なげないピッチングを披露。2試合連続完封勝利でチームを勢いづけた。準々決勝では救援を仰いだが、しっかり試合をつくったのはエースの自覚だ。

 

 高校入学当初は遊撃手だったが、その年の夏から投手を兼務するようになり、昨夏にはエースナンバーを背負いマウンドに立った。「自分が点を取られなければ負けることはない」。そんな思いを抱いて毎試合マウンドに立つ。ボールを強く握り、指先で押し込むキレのあるストレートが生命線。顔色ひとつ変えずに冷静な投球でピンチの場面を切り抜ける。

 

 準決勝は疲労が抜けきれず、本来の実力を出し切れなかったが、言い訳ひとつせず「大事なところで打たれたのは自分に力がなかったということ」と振り返った。「エースたるもの常に冷静であれ」と山本一孝監督の教えを守り、最後までエースとしての振る舞いを忘れなかった。「3年生25人と野球ができた。ベンチには入れなかったメンバーの声援が力になった」と3年間の思いを話した時に涙を浮かべたが、最後まで気丈に振る舞い球場を後にした。

 

4連投した日高翔太

 

 日高が投手にコンバートされたと同時に、投手から捕手に転向したのが今宮悠斗(3年)だ。昨年の夏の予選でもマスクをかぶり、日高を女房役として支えた。「自分はピッチャーの気持ちが理解できる。気持ちよく投げられるように組み立てている」。1年の秋から日高とバッテリーを組み、今宮のサインに日高は首を振ったことがないというほど絶大な信頼を寄せている。

 

 新チームになってからは主将となり、勝負強いバッティングで中軸を担った。今大会は準々決勝から四番打者としての役割を果たした。「絶対に甲子園に行くつもりだった」。目標を達成することはできなかったが、「これまでで最高の準備をして臨んだ。悔いはない。来年は後輩たちがやってくれるはず」とバトンを託した。

 

 晴れ舞台を目前に涙を飲んだ大分工業。山本監督の言葉が全てを表していた。「粘り強く、素晴らしい試合をした」。きびきびとして攻防が緩むことなく続き、あと一歩及ばなかった。勝者と敗者を分かつことが酷に思える熱戦だった。

 

攻守の要となった今宮悠斗

 

(柚野真也)