
珠玉の一枚 Vol.41 【大分県】
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頼れる10番が、豪快なゴールでJ1参入プレーオフ進出を決めた。40節横浜FC戦の後半22分に2−2の場面でピッチに立った野村直輝は、その5分後に大きな仕事をやってのけた。敵陣でこぼれ球を拾うと、「ゴールまでのイメージを描けた。打った瞬間に入ると思った」と左足を振り抜き、ボールはゴール左隅に突き刺さった。野村はシュートと同時にゴール裏のサポーターめがけて走り、祝福を受けた。「この試合で吹っ切れた。ガムシャラに一生懸命なマインドを持ってやるだけ」と手応えを口にする。
今季はけがで出遅れ、その後も2度目の長期離脱をするなど野村自身、不完全燃焼のシーズンを送っていた。「今季だけでなく大分に来てから、ずっと思い描くプレーができずにいた。けがも多く、チームに貢献できないことが苦しかった」と明かす。ピッチに立っても持ち味のドリブルを発揮するよりバランスを考え、パスの出し手となるプレーを心掛けた。「エゴを出さず、チームとして機能するようにうまくやらなければと考え過ぎていた」と本来のアグレッシブなプレーが影を潜め、輝きを失った。
結果を出す最後のチャンスと覚悟を決めて臨んだ横浜FC戦
苦しむ野村に佐藤淳フィジカルコーチは「コンディションが上がれば、必ず自分らしいプレーができる」と言い続け、寄り添った。リハビリを続けるチームメートから励ましの言葉をもらったのは1度や2度ではない。野村は気持ちを切らすことなく「チャンスは必ず来る」と信じ、試合のイメージを膨らませた。
9月に入り、出場機会を得るようになったが結果を出せない日が続いた。横浜FC戦では「今日結果を出さないと次はないと覚悟を持ってピッチに入った」。動きは良く、ボールタッチもいい。何よりピッチ全体を俯瞰(ふかん)して見ることができた。「やり慣れたピッチということもあったが、調子のいい時の感覚だった」と野村。プロキャリアをスタートした横浜FC戦のホームスタジアムが「気持ちを乗せてくれた」ことで、かつての感覚を取り戻せたと感謝した。
ようやくトップパフォーマンスを取り戻した野村は、「結果を出せたことは大きい。全てがクリアになった。これからは深く考えすぎずにプレーしたい」と話す。J1参入プレーオフへ向けて「簡単に突破できるほど甘くはない」と、これまで2度のプレーオフで敗戦した経験者は気を引き締める。それでも勝負を決めることができる10番の復調は、チームにとって追い風だ。「3度目の正直にしたい」と強い思いで残りの試合に挑む。
J1参入プレーオフ進出弾を決めた
(柚野真也)
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