病と闘い、ピッチに立つ 犬丸祥太朗(大分鶴崎高校サッカー部・2年)

2021/02/17
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 不定期に訪れる腹痛に耐え、最後までピッチに立ち優勝の瞬間を迎えた。サッカーの県高校新人大会で14年ぶり3回目の優勝を決めた大分鶴崎の犬丸祥太朗は安心した表情を浮かべた。「優勝の瞬間をみんなと味わえた」。ベスト体重から6㌔落ちて体力の消耗は著しかったが、最後まで試合ができたことが何よりうれしかった。

 

 昨年の秋ごろから反復的な腹痛に悩まされた。その痛みは頻度を増し、血便を伴う。昨年11月の全国高校選手権大会県予選の準々決勝を終えた翌日に病院に行くと、潰瘍性大腸炎と診断された。安倍晋三前首相を辞任に追い込んだ病気だ。体調は日によって異なり、食事や生活習慣を見直しても症状は改善できない。食べ盛りの高校生にとって肉などの脂質を摂取できないことは辛かったが、犬丸にとって「思い切りサッカーができない」ことが何よりも苦しかった。

 

 高校に入学してすぐに守備範囲の広さと相手の攻撃の芽を摘むリスク管理の高さが評価され、主力に抜てきされた。「体力が持ち味」と言い切る運動量の多さはチームで1、2位を争う。毎週水曜は、学校近くの練習場から大分キヤノン大分事業所までのアップダウンコースを往復して走る“地獄の10km走”というメニューがある。常にトップを走る犬丸についたあだ名が“キヤノン王者”。試合ではピッチを縦横無尽に走り、ボールのあるところに顔を出し、味方をサポートする。チームに欠かせない潤滑油となったが、突然訪れた病で思うような練習もできず、食事も規制された。59㌔あった体重は53㌔まで落ち、体力も筋力もそぎ落とされた。「なんで自分だけが」といら立ち、「大好きなサッカーができなくなるんじゃないか」と不安の日々を送った。

 

中盤の要として優勝に貢献した犬丸祥太朗

 

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