敗者の涙②  全国高校バスケットボール選手権(ウインターカップ)女子県予選 大分 あれから10日後、3年生の思い

2020/11/07
  • 冬の全国大会

 一人一人の技術は高く、シュート成功率も高い。圧倒的な攻撃力で強豪校をなぎ倒したが、最後の壁となった中津北の強度の高い守備を破ることができなかった。技術で勝っても勝負に勝てない。対戦相手の口から大分のスタイルを評価する声、脅威に感じるという声が出ることも少なくなかった。それでも優勝を逃したのは「持ってない」という運、不運が関わる要素以外でも、何かが足りないということだ。主導権を握りながら、終盤に逆転された。2年間、あと一歩のところまで追い詰めるが準優勝に終わる日々を過ごす。

 

 勝ちきれない要因を洗い出し、乗り越えるための戦いが続いた。エースの秋吉楓(3年)に続く得点源として有墨遥野(3年)が独り立ちし、さらに奈須が急成長。武器である攻撃力は威力を増し、徹底的に走り込んだことで粘り強い守備も手にした。全学年がそろった今年度は選手層が厚く、これまでの強化が結実した。7月の県高校総体では優勝を遂げ、悲願のウインターカップ出場で総仕上げとなるはずだった。

 

 ウインターカップ県予選では試合の入りこそ悪かったが、尻上がりに調子を上げ、どの試合も圧勝した。決勝戦も悪くなかった。ただ、他校にあって大分になかったことがあった。「これまでいろんな大会を経験したけど、“高校最後”の大会は始めてだった。私たちには先輩がいないので、どんな思いでこの大会を戦ってきたのかは分からなかった」と秋吉。中津北との“差”は、これまで時間をかけて勝ち負けを繰り返し、泣いたり笑ったりした先輩たちが築いた時間であり、歴史の差だったのかもしれない。有墨も、その“差”を実感した一人だ。「後輩たちにはこんな思いをしてほしくない」。ベンチで見守った古門美咲(3年)も勝利を信じて疑わなった牧唯夏(3年)も後輩へ託す思いは同じだ。

 

 3年生が高校最後の大会で味わった悔しさを間近で見た1、2年生は何を感じたのか。栄光を寸前で取り逃した“置き土産”は示唆に富んでおり、飛躍を遂げる糧とできれば“大分時代”が間もなく到来するはずだ。

 

確かな歴史を築いた3年生たち

 

 

(柚野真也)

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