グッドルーザー① 女子バレー臼杵 奇跡を起こす準備はできていた

2019/11/03
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 スポーツにおいて勝つために必要な要素は、ひたむきさであり、競技への純粋な愛や情熱であったりする。勝者はその思いが誰よりも強い。敗者は次の勝者になるために心血を注ぐ。今年も晴れ舞台を目指し、県予選を戦った高校生たち。全てを出し切り笑顔を見せる者。悔しさで表彰式では素直に喜べなかった者。ここでは、あと一歩及ばず全国に届かなかった「美しき敗者」を追った。

 

 一つ一つのプレーに会場がどよめき、観客のボルテージが上がっていくのを感じた。全日本バレーボール高校選手権大会(春の高校バレー)県予選の女子準決勝。この試合で臼杵の選手たちはまばゆいほどの輝きを放ち、多くの観客を魅了した。日本一に向けて県予選でつまずくことなんて想像もしていなかった東九州龍谷(東龍)を追い詰めたことは事実だ。

 

 辻郁徳監督は「7月から東龍対策をしてきた」と明かした。臼杵は4カ月もの間、19年間県内で負けなしの東龍に勝つためだけに特化し、何ができるかを突き詰めた。まずは戦う相手の大きさを知るために、全国高校総体の会場となった宮崎に足を運び、東龍の姿を目に焼き付けた。選手の特徴、長所や短所を洗い出し、サーブの種類とコース、サーブ後の攻撃のパターン、スパイクのコース、軌道など、勝つための分析は細部まで多岐にわたった。「何が原因で悪い状況に陥っているのかを探り、ヒントを与え、抜け出す手助けをする。それを何度も繰り返した」と辻監督。

 

 選手たちに「なるほど、やってみよう」と納得させ、試合につながるような練習を考え、イメージをチームに植え付けた。突出した能力を持つ選手はいないため、個に依存するのではなく、組織力を高めることを軸に戦略を立てる。名将は「最終的には選手がボールを操るので、選手の性格や人間性を重視している」と語るように、理論派であるが精神的な部分も尊重した。

 

打倒東龍に向けて4カ月、勝利を信じ続けた

 

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