3年生、冬物語 vol.3  何度でも挑み続ける(東九州龍谷高校)

2019/01/20
  • 冬の全国大会

 身長160㌢、決して大きくない体に反骨心が詰まっている。高校入学当初から柔らかいタッチのトスとコートを俯瞰(ふかん)できる能力を評価されていたが、1学年上の170㌢を超えるセッターの陰に隠れた存在だった。同級生の平山、合屋咲希、梅津憂理が1年生の頃からコートで活躍する姿をベンチで見る時間が長かった。ただ、ベンチにいた時も絶えず「自分ならどこにトスを上げるのか」を想像し、練習ではイメージを膨らませてトスを上げ続けた。

 

 最後の大会となった春の高校バレーでは、「このメンバーとバレーを楽しみたい。自分たちの最高を出せば勝てる」と仲間への感謝の思いを乗せてトスを上げた。準決勝の下北沢成徳戦では最終第5セットも競り合いとなった。先にセットポイントを奪ったが、そこから2連続得点を許し14-13。勢いは完全に相手に移ったが、「最後は平山。キャプテンであり、エースである平山が決めなければ意味がない。どんな体勢でも(トスを)上げようと決めていた」。相手のブロックに2度続けて阻まれていたが、3度目のトスも平山に上げ試合を決めた。

 

 精密機械のようなトスワークの裏には、涙もろく、義理人情にあふれた人間味がある。決勝の舞台に立ち、そして夢破れた時、相手選手が喜びを爆発させる表彰式をまともに見ることができなかった。ただ、「みんながここまで連れてきてくれた」と、うなだれるチームメイトを抱擁した。なにしろ責任感の強い選手だ。選手はもちろん、応援してくれた人たちも悔しい思いをした。そんな人たちの思いを胸に、次のステージでも頂点を目指すのだろう。指先まで届いていたものを手に入れるために。

 

Vリーグでの活躍が期待される

 

3年生、冬物語 

vol.1 不遇の時代を過ごした3年生が礎を築く(別府溝部学園高校)

vol.2 まだみんなとバスケがしたい(中津北高校)

 

(柚野真也)

 

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