トリニータ 開幕戦を読み解く 「つなぎ」と「シンプル」の併用

2019/03/01
  • 大分トリニータ

 開幕戦の先制点は最終ラインのDF福森直也の長いパスが起点となり、最後は前線3人のコンビネーションで崩した好例で、流れるようなパス交換で一気に侵略してみせた。こうした「つなぎ」と「シンプル」のバランスの良い攻撃を繰り出す源には、「理想的な選手間の距離」(藤本)がある。全体をコンパクトに保ち、絶えずポジショニングを修正することで、相手の攻撃を網にかけやすく、攻撃ではサポートに入りやすいのだ。もちろん、コンパクトさを保つために、トラッキングシステムデータが示したチーム全体の走行距離は見逃せない。鹿島戦での走行距離123.675㌔はリーグ1位だった。片野坂監督は「ただ走ればいいわけではない。必要なときに走り、戦術に合わせた走りが必要」と意に介さなかったが、選手が戦術を理解し、意識的に適切なポジション取りをした結果と言えるだろう。

 

 こうして「縦」の意識を高めたことで、本来のピッチの幅を広く使う「横」からの揺さぶりが効果的になる。開幕戦ではMF松本怜、FW高山薫の両サイドの選手は守備に追われることが多く、攻撃参加の時間は少なかった。ただ、同じシステムを採用する松本山雅FCとのホーム開幕戦では、サイドの攻防が勝敗を分けるポイントになりそうだ。片野坂監督は「34分の2がはじまるだけ。何も変わらない」と淡々と話したが、J3から積み上げたスタイルへの自信がうかがえた。ピッチの至るところで“あうんの呼吸”のようなコンビネーションが生まれてくれば、今季の目標である残留も早い段階で見えてくるかもしれない。

 

開幕2得点に続き、今節も得点が期待されるFW藤本憲明

 

(柚野真也)

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