TURNING POINT 〜つきぬけた瞬間〜 #02 「今いる場所で最善を尽くす」(城彰・キヤノンイーグルス)

2017/10/02
  • ターニングポイント~つきぬけた瞬間~

 

とことんやり抜けば道は拓ける

 

 城が入学した前年に全国高校ラグビー大会で準優勝した大分舞鶴高校。強豪校のレベルは高く、練習は生半可ではなかった。今も恩師と慕う堀尾大輔監督の指導は厳しく、新入部員はどんどん減っていった。

 「練習は半端なくきつかった。そんな中で堀尾先生から基本を徹底的に叩き込まれた。両手でしっかりボールを持つとか、タックルは相手の中心に入るとか。でも、それがその後の僕の軸になった。好プレーというのは基本プレーの連続。当たり前のことを当たり前にできないと一流選手になれない。それはラグビーだけじゃなく、人を裏切らないとか、待ち合わせに遅れないといった人間形成もしっかり教えてもらった」

 城の才能は早速開花する。1年からプロップのポジションを奪い、高校ラガーマンの憧れの花園のピッチに3年間立ち続けた。3年時には高校日本代表にも選ばれ、その経験が彼をさらにラグビーへ傾倒させることになる。

 

 進学した明治大学でもレギュラーとして活躍。もちろん北島忠治監督の薫陶も受けた。「僕が入った頃は北島先生はもう直接指導はされてなかったけど、先生の『前へ』という言葉は響いた。もちろんラグビーにおいて前に進めということもあるが、人生につまずいたときも逃げずに前を向けた。もともと僕はポジティブな人間だけど下を向くことはなくなった」

 大学を卒業して入社したキヤノンは、当時トップリーグのひとつ下のカテゴリー(トップイーストリーグ)に属していたが、「キヤノンと一緒に成長したい」と前向きだった。チームとともに勝てるために何ができるのか、何が必要なのかを試行錯誤した。努力の甲斐あり、翌年にトップリーグに昇格した。「とことんやっていれば誰かが見てくれている。中学の頃からそうだった。節目でいろんな方に声を掛けてもらった。高校も大学も誘ってもらい、キヤノンの時もそう。今いる場所で最善を尽くす。そうすれば道は拓ける」。

 現在、トップリーグ6シーズン目のキヤノンは5戦未勝利と苦しんでいる。「今は我慢のとき。勝てばチームも個人としてもいい方向に向かっていく。献身的にプレーを続ければいい」とニヤリと笑った。迷いはない。黙々とブレイクポイントに集散を繰り返し、地味ながらラックを固め、モールを押し込む。玄人でも分かりにくい仕事人ぶりを発揮してピッチに立つ。

 

(柚野真也)

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