グッドルーザー① 女子バレー臼杵 奇跡を起こす準備はできていた

2019/11/03
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 その一つが、「奇跡を起こすためには勝利を信じることが必要」と説いたこと。ただ、監督の言葉だけでは選手の心に響かなかったのは事実。そこで4年前のラグビーワールドカップ(W杯)で南アフリカに逆転勝利した「ブライトンの奇跡」を特集した動画を見せた。当時を振り返る日本代表の五郎丸歩や広瀬俊朗の言葉が選手に突き刺さった。キャプテンの小田彩乃(3年)は、「不可能なんてない」と思えるようになったという。さらにラグビーW杯日本大会で活躍する日本代表の記事を体育館の壁に張り付け、自分たちの姿と重ね合わせた。

 

 試合は第1セットの立ち上がりで良さが出た。強気のスパイクサーブで攻撃に参加できる相手を削り、相手の動きを想定してブロックに飛ぶ。コースを限定し、ワンタッチで勢いをそいだボールを、レシーブ陣が待ち構える。攻撃では両サイドいっぱいにトスを散らせ、幅のあるスパイクで東龍の高さを攻略した。23-21と先に追い詰めたがセットを落とす。ただ、ここで気持ちが切れるどころか、逆転に向けて士気が上がる。「全員が歴史を変えようと本気で思っていた。試合中に鳥肌がたったのは初めて」と小田。第2セットは3度のマッチポイントをブレイクし、力でねじ伏せた。フルセットにもつれた激戦。第3セット序盤で4点リードを許す展開であっても、諦めず食らいつき流れを引き寄せた。中盤以降は、蓄積した疲労が吹き出し13-25で力尽きた。

 

 試合後、辻監督は「やるべきことを全部やった。小さな選手たちが大きな敵に立ち向かう姿を見せることができた。勝たせてあげたかった」と唇をかんだが、小田は「悔いはないとは言えないけど、この大会で全てを出し切った」と胸を張った。セットカウント1-2、惜敗と簡単な言葉で表現するのが陳腐に思える。この数十年、県内で最も東龍を追い詰めた高校として記憶に残る大一番だった。

 

惜しくも敗れたが確かな爪痕を残した

 

(柚野真也)

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